松山の銘菓「タルト」の魅力といえば、和菓子らしい控えめな甘さと口に入れた瞬間に広がる爽やかな柚子の香りをイメージすることが多いと思います。甘い餡と柑橘の香りが絶妙にマッチしていて、お茶請けにはもちろん、ちょっとした手土産としても喜ばれる一品です。
でも、お土産にいざ買おうとすると「一六タルト」と「六時屋タルト」などいろいろなメーカーがあったりして、どれを買ったらいいのか迷ってしまいます。メーカーももちろんですが、定番の柚子から栗入りなどの変わり種まで味もさまざまです。
今回は、購入したいろいろなメーカーのタルトを食べ比べてみました。しばらく日々のおやつがすっかりタルトまみれになっていましたが、全然飽きがこないくらいおいしかったです!

どのタルトを買おうか迷っているときは、ぜひ参考にしてみてくださいね。
松山銘菓「タルト」とは?洋菓子じゃない愛媛のソウルフード
いまやすっかり有名な愛媛のタルトですが、あの「のの字」を描く可愛らしい断面には、実は作り手のこだわりや伝統がたっぷりと詰まっているんです。せっかくなので、まずはそのタルトの由来や特徴について簡単にみていきます。
カステラで餡をくるり!「のの字」が可愛い独自スタイル
「タルト」と聞くと、普通はクッキー生地のケーキのような洋菓子をイメージしますが、愛媛・松山の「タルト」は全くの別物。こちらはカステラ生地で餡を巻いたロールケーキ状の和菓子です。
切った断面がひらがなの「の」の字に見えるのが最大の特徴で、中身は四国特産でもある柚子を練り込んだ「柚子餡」が主流です。ふんわりしたカステラと、爽やかな柚子の香りが絶妙にマッチして、ついつい手が伸びてしまう美味しさのお菓子に仕上がっています。
松山藩主が伝えた伝統!歴史ある郷土菓子の由来
このユニークなお菓子のルーツは、江戸時代初期にまでさかのぼります。当時、長崎探題職を兼務していた時期もある松山藩主・松平定行(まつだいらさだゆき)公が、長崎に入港したポルトガル船から南蛮菓子の製法を持ち帰ったことが始まりだとされています。
もともとの南蛮菓子はカステラの中にジャムが入ったものでしたが、定行公はこれを日本風にアレンジ。ジャムの代わりに、特産の柚子を入れた餡を使うことで、現在のタルトの原型が生まれました。
この製法は長い間、久松松平家の「家伝」として大切に守られてきましたが、明治時代以降に街の菓子職人たちへと技術が伝わり、愛媛を代表する銘菓として広まっていったようです。異国の文化を取り入れつつ、自分たちの好みに合わせて進化させているのが面白いところですね。
種類の豊富さが魅力の【一六タルト(一六本舗)】
松山のお土産として有名なタルトですが、中でも一六本舗はラインナップの豊富さが魅力です。お馴染みの味はもちろん、時期によって変わる限定品まで、お店に行くとずらりと並んでいます。今回は、いつでも購入できる通年の味から、今回購入した季節限定の特別なフレーバーまで食べて楽しんでみました。

見た目は色違いみたいですが、実際の味はとても特徴がありました!
通年で購入できる定番の味
愛媛・松山の銘菓といえば、真っ先に思い浮かぶのが一六本舗の『一六タルト』かもしれません。 伝統的な和菓子でありながら、実はさまざまなフレーバーが展開されています。まずは、いつでも購入できる定番の味からみていきます。
【一六タルト】柚子
一六タルトといえばコレ!といえる代表的な味が、この『柚子』です。愛媛県産のゆずが贅沢に使用されていて、一口食べると爽やかな香りが広がります。
生地はほんのりゆず風味でしっとりとした食感。中の餡からは、しっかりとゆずの風味が感じられます。「これぞ松山の味」を楽しみたいときには、やはりこの味が一番おすすめです。

伝統の味だけあって、安心感のあるおいしさです!
【一六タルト】宇治抹茶
和の風味をシンプルに楽しみたいときは『宇治抹茶』がぴったりです。 抹茶のお菓子というと苦味が強いものもあるのですが、これは抹茶の主張が強すぎず、とても優しい味わいなのです。
パッケージにもあるとおり、京都の老舗・森半の抹茶が使用されています!癖のないシンプルな抹茶味なので、誰にでも食べやすいのが嬉しいポイントです。
【一六タルト】ビターチョコレート(ゴディバコラボ)
「これって一六タルト?」と驚いてしまうのが、あの『GODIVA(ゴディバ)』とコラボレーションしたチョコフレーバー。 松山のタルトといえば和菓子のイメージが強いですが、こちらは完全にケーキといった雰囲気で、食べてもやっぱり洋菓子みたいでした。
しっとり上品なココアスポンジで、濃厚なチョコ餡を巻いています。チョコ餡といっても重すぎず、あっという間になくなりました。

個人的には大ヒットだったので、見掛けたらぜひ食べてみてください!
季節ごとに楽しめる限定フレーバー
一六タルトの魅力は定番だけではありません!季節ごとに登場する限定フレーバーがあり、その時期だけの旬の味覚を楽しめるようになっています。 ここでは、今回食べた秋の味覚を2つほどみていきます。
【一六タルト】焼きいも
秋限定で登場したのが、この『焼きいも』味です。 口に入れた瞬間、「びっくりするほど焼き芋!」と感じるほど、素材の風味がダイレクトに伝わってきます。パッケージもかわいいのでお気に入りです。
香ばしい焼き芋の風味が凝縮された餡は、濃厚でありながら素朴な甘さが魅力。お芋好きにはたまらない一品でした。
【一六タルト】栗づくし
同じく秋の限定が『栗づくし』です。 名前の通り、スポンジはほんのり栗の味がして、中の餡はまさにとっても栗の味。
さらに餡の中には刻まれた栗のダイスが入っているので、食感のアクセントも楽しめます。どこを食べても栗を感じられる、贅沢な仕上がりです!

これも好きすぎて、去年も秋は栗づくし食べてたな…と思い出しました。
まろやかな甘さが特徴の【うつぼ屋】
坊っちゃん団子で有名な「うつぼ屋」ですが、実はタルトも隠れた逸品です!他のお店よりもひと回り小さい横幅が5センチほどの、かわいらしいサイズ感です。1箱に8切れ入りで、これなら少しずつ色々な味を楽しみたいときや、ちょっと食べたいときにも楽しめるのが魅力。
基本となる「姫タルト」から伊予柑ピールを使った「媛色タルト」まで、それぞれの風味の違いをみていきます。
看板商品である「姫タルト」
まずは看板商品の「姫タルト」から。タルトといえば定番ともいえる「ゆず」と「抹茶」の二つの味がラインナップされています。
【うつぼ屋】さっぱり優しい「ゆず」
まずは王道の『姫タルト ゆず』です。松山のタルトと聞くと、名産も相まってイメージの強い味です。
食べてみると、ゆずの香りがほんのりと広がる、どこか懐かしくて優しい味わい。餡の甘さが優しくてくどくないので、ついつい食べ過ぎてしまいがちです。シンプルだからこそ、お店ごとのこだわりの違いが感じられる一品でした。
これは直接タルトの味とは関係ないのですが、箱がすごくかわいかったです!箱を開けると内側にタルトの絵柄が描かれていて、タルトのかわいい形が活かされててすっかり気に入ってしまいました。
【うつぼ屋】爽やかな風味の「抹茶」
鮮やかな緑色が目を引く『姫タルト 抹茶』です。こちらは中の餡にゆずを合わせているだけではなく、生地に抹茶が練り込まれているのがポイント。
抹茶とゆずの爽やかさが絶妙にマッチしていて、全体的にとても優しい味にまとまっています。和の素材同士の組み合わせなので、なんだかほっとする美味しさでした。
ちゃんとゆず味はゆず味のタルト、抹茶味は抹茶味のタルトが書かれています!
ちょっと特別感のある「媛色タルト」
『うつぼ屋』のタルトの中でも、少し特別感を楽しみたい時におすすめなのが『媛色(ひめいろ)タルト』です。
こちらは、えひめスイーツコンテスト2024で愛媛県知事賞を受賞したもの。学生さんたちが開発し、そのアイデアが商品化されたものなのだそうです。
【うつぼ屋】伊予柑ピール香るリッチな味わい「媛色タルト」
媛色タルトは、生地に「かぶせ茶」が使用されていて、白っぽい上品な餡には伊予柑の果皮(ピール)とゆずが合わせられています。
口に入れると、伊予柑ピールの存在感がしっかりと感じられました!ゆずと合わさることで非常に風味豊かな仕上がりになっています。通常のゆずだけのタルトとは一味違う、柑橘の爽やかさと食感を楽しめるのが最大の魅力ですね。
ちなみに、こちらの箱を開けると、中にはタルトではなくお花の絵柄が広がっています。ちょっとした工夫がかわいらしく上品さもあるので、贈り物にも素敵かもしれません。
個性が光る、愛媛のタルトメーカーたち
同じ「愛媛のタルト」でも、お店によってこだわりや個性は驚くほど違います。ここでは、手作りの温かみを感じる老舗から、スーパーで手軽に出会えるものまで、個性が光る4社をみていきます。
【六時屋】手巻きへのこだわりと自社製餡
昭和8年の創業以来、昭和天皇にも愛されたという歴史ある『六時屋』。なんといっても特徴的なのは、その丁寧な手仕事にあります。
【六時屋】タルト
機械化が進む現代でも、職人さんが一本一本手巻きすることにこだわっているというから驚きでした。実際に食べてみると、そのこだわりが食感に表れているのが分かります。
味のバリエーションをあえて広げすぎず、定番の味を大切に守り抜く潔いタルト屋さんです。自社製にこだわった餡はとても柔らかく、極めてシンプルな味わいでした。余計なものを足さない、素材本来の良さを引き出した王道のタルトですね。
【ハタダ】シンプルなものからまるごと栗入りまで
愛媛のお土産として広く親しまれている『ハタダ(畑田本舗)』。このタルト屋さんも一つから購入できるので、栗を使った2種類のタルトを食べ比べてみることができます。
【ハタダ】栗タルト
生地の中に、細かく刻まれた栗のダイスが入っています。ベースとなるスポンジはふんわりと軽く、ほんのりとゆずが香る優しい風味。餡もゆず風味に仕上げられているので、全体的に軽やかな美味しさです。
【ハタダ】御栗タルト
「栗タルト」よりもさらにリッチな味わいを楽しみたいならこの御栗タルトです。スポンジの食感は似ていますが、中の餡は甘さが控えめに調整されています。その分引き立っているのが、ゴロっと入った栗の存在感です。
栗のダイスが入っていることが多い栗のタルトですが、これは丸ごと栗が入っているので見た目の迫力も十分。栗本来のホクホクとした食感がしっかり感じられて、栗好きにはたまらない満足感でした!
【亀井製菓】小さく手に取りやすさが魅力
色々な松山らしいお菓子を作っている『亀井製菓』で見つけたのは、なんとも可愛らしい『ひとくちタルト』です。普通のタルトももちろん取り扱っているのですが、この小さいタルトは珍しくて思わず手に取ってしまいました。
【亀井製菓】ひとくちタルト
このタルトの最大の特徴は、そのサイズ感です。一般的なカット済みタルトよりもだいぶ小ぶりで、食べやすい大きさになっています。
味はとてもシンプルで、クセがありません。ゆずの風味もほのかに香る程度で甘さも控えめなので、誰にでも好かれるタイプの味わいです。個包装になっていて携帯性も抜群なので、自分用にバッグに忍ばせておくのにも、ちょっとしたお配り用のお土産にも重宝しそうです。
【あわしま堂】スーパーでも購入できる身近なお菓子
最後は、松山に限らず全国のスーパーでも見かけることのある『あわしま堂』のタルトです。
【あわしま堂】タルト
あわしま堂といえば、地元でも旅行先でも見掛ける和菓子メーカーです。その地域ごとの特色を活かした和菓子を展開しているのが面白くて、ついスーパーで探してしまいます。
シンプルな見た目ながら、食べてみるとゆずの香りがしっかりと効いているのが印象的。このタルトはスーパーの和菓子売り場で買えるので、一番手軽なお菓子なのですが、しっかりおいしいタルトです。
まとめ
- Qメーカーがたくさんあって、どれを買うか悩んだときは?
- A
フレーバー重視なら一六本舗、伝統の味なら六時屋など、特徴で選ぶのがおすすめ
いろいろな味を楽しみたいときは種類が多くて個包装の一六本舗、職人の手巻きによる口溶けや昔ながらの味を求める方は六時屋を選ぶなど、特徴から選ぶのがおすすめです。
- Q友人や職場へのお土産に向いているのは?
- A
バラマキなら個包装の一六本舗、ちょっとした贈り物ならパッケージが可愛いうつぼ屋
バラマキなら誰でも知ってる安心感と個包装がポイントの一六本舗、ちょっとした手土産ならうつぼ屋のパッケージの雰囲気とこじんまりしたかわいさがいちおしです!
- Q定番の柚子風味以外も試してみたい
- A
チョコや抹茶、季節限定の栗や芋など洋菓子風も充実
ゴディバコラボのチョコ味や秋限定の焼きいも味など、コーヒーや紅茶に合うケーキのようなタルトもたくさん揃っています。
同じ「タルト」でも、お店ごとに食感や方向性が思っていたより違っていたので、食べ比べてみると新しい発見があります!種類がとにかく多いので悩んでしまいますが、まずはパッケージの好みや気になった味から試してみるのが一番良いかもしれません。

ぜひ自分のお気に入りを見つけてみてくださいね!
